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メニエール病診断基準

メニエール病診断基準の変遷

1974年、日本においてメニエール病が厚生省により特定疾患に指定された際、厚生省特定疾患メニエール病調査研究班によって「メニエール病診断の手引き」が作成された1)。ここでは、めまいに聴覚症状(難聴、耳鳴、耳閉塞感)が随伴する場合を「確実例」、聴覚症状が固定しておりめまいだけを反復する場合や、めまいは伴わずに聴覚症状だけが変動する場合を「疑い例」としていた。

その後、2008年に厚生労働省難治性疾患克服研究事業前庭機能異常に関する調査研究班の研究活動の一環として改訂が行われた2)。この改訂では、メニエール病の病態を内リンパ水腫と位置づけ、確実例の定義を簡潔化するとともに、1974年の「疑い例」を、聴覚症状が変動するがめまいは起こらない場合を「非定型例(蝸牛型)」、回転性めまい発作を反復するが聴覚症状は固定している場合を「非定型例(前庭型)」とし、その診断基準はより明確なものとなった3)

一方、1987年には日本めまい平衡医学会によりめまい学会基準が作成され、2017年に改訂された4)。この改訂では、臨床症状を主軸に作成していた診断基準にあらたに5つの検査項目が盛り込まれた。この5つの検査所見のうち、すべてを満たすものが「確定診断例」、検査所見の1~4の項目を満たすものが「確実例」、臨床症状の3項目を満たすものが「疑い例」と分類されるようになった。

  1. 渡辺勇:厚生省研究班のメニエール病診断基準について.耳鼻臨床 69:301-303、1976.
  2. 厚生労働省難治性疾患克服研究事業前庭機能異常に関する調査研究班(2008~2010年度)編:メニエール病の診断基準.メニエール病診療ガイドライン2011年版.金原出版、東京、pp.8-11、2011.
  3. 渡辺行雄:メニエール病診断基準の改定にあたって.Equilibrium Res 68:101-102、2009.
  4. 池園哲郎、伊藤彰紀、武田憲昭、中村正、浅井正嗣、池田卓生、今井貴夫、重野浩一郎、高橋幸治、武井泰彦、山本昌彦、渡辺行雄:めまいの診断基準化のための資料 診断基準2017年改定.Equilibrium Res 76:233-241、2017.

日本めまい平衡医学会による
メニエール病の診断基準(2017年)

本診断基準の特徴は、従来は症状のみ規定された確実例の診断に、あらたに検査所見の項目が追加されたことである。

メニエール病診断基準
Meniere’s disease

A
症状

1 めまい発作を反復する。めまいは誘因なく発症し、持続時間は10分程度から数時間程度。
2 めまい発作に伴って難聴、耳鳴、耳閉感などの聴覚症状が変動する。
3 第Ⅷ脳神経以外の神経症状がない。

B
検査所見

1 純音聴力検査において感音難聴を認め、初期にはめまい発作に関連して聴力レベルの変動を認める。
2 平衡機能検査においてめまい発作に関連して水平性または水平回旋混合性眼振や体平衡障害などの内耳前庭障害の所見を認める
3 神経学的検査においてめまいに関連する第Ⅷ脳神経以外の障害を認めない。
4 メニエール病と類似した難聴を伴うめまいを呈する内耳・後迷路性疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性疾患など、原因既知の疾患を除外できる。
5 神経学的検査においてめまいに関連する第Ⅷ脳神経以外の障害を認めない。

診断

メニエール病確定診断例
Certain Meniere’s disease
A.症状の3項目を満たし、B.検査所見の5項目を満たしたもの。
メニエール病確実例
Definite Meniere’s disease
A.症状の3項目を満たし、B.検査所見の1~4の項目を満たしたもの。
メニエール病疑い例
Probable Meniere’s disease
A.症状の3項目を満たしたもの

診断にあたっての注意事項

メニエール病の初回発作時には、めまいを伴う突発性難聴と鑑別できない場合が多く、診断基準に示す発作の反復を確認後にメニエール病確実例と診断する。

メニエール病非定型例診断基準
Atypical Meniere’s disease

1 メニエール病非定型例 蝸牛型 :Cochlear type of atypical Meniere’s disease

A
症状

1 難聴、耳鳴、耳閉感などの聴覚症状の増悪、軽快を反復するが、めまい発作を伴わない。
2 第Ⅷ脳神経以外の神経症状がない。

B
検査所見

1 純音聴力検査において感音難聴を認める。聴力型は低音障害型または水平型感音難聴が多い。
2 神経学的検査において難聴に関連する第Ⅷ脳神経以外の障害を認めない。
3 メニエール病と類似した難聴を呈する内耳・後迷路性疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性疾患など、原因既知の疾患を除外できる。

診断

メニエール病非定型例(蝸牛型)確実例
Definite cochlear type of atypical Meniere’s disease
A.症状の2項目を満たし、B. 検査所見の3項目を満たしたもの。

診断にあたっての注意事項

メニエール病の初回発作時には、めまいを伴う突発性難聴と鑑別できない場合が多く、診断基準に示す発作の反復を確認後にメニエール病確実例と診断する。

2 メニエール病非定型例 前庭型:Vestibular type of atypical Meniere’s disease

A
症状

1 メニエール病確実例に類似しためまい発作を反復する。一側または両側の難聴などの聴覚症状を合併している場合があるが、この聴覚症状は固定性でめまい発作に関連して変動しない。
2 第Ⅷ脳神経以外の神経症状がない。

B
検査所見

1 平衡機能検査においてめまい発作に関連して水平性または水平回旋混合性眼振や体平衡障害などの内耳前庭障害の所見を認める。
2 神経学的検査においてめまいに関連する第Ⅷ脳神経以外の障害を認めない。
3 メニエール病と類似しためまいを呈する内耳・後迷路性疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性疾患など、原因既知の疾患を除外できる。

診断

メニエール病非定型例(前庭型)確実例
Definite vestibular type of atypical Meniere’s disease
A.症状の2項目を満たし、B.検査所見の3項目を満たしたもの。

診断にあたっての注意事項

メニエール病非定型例(前庭型)は、内リンパ水腫以外の病態による反復性めまい症との鑑別が困難な場合が多い。めまい発作の反復の状況、めまいに関連して変動しない難聴などの聴覚症状を合併する症例では、その状態などを慎重に評価し、内リンパ水腫による反復性めまいの可能性が高いと判断された場合にメニエール病非定型例(前庭型)と診断する。