実践!めまいの治療
メニエール病や遅発性内リンパ水腫は、急性めまいで受診することが多いとされています。急性めまいの鑑別診断には、日本めまい平衡医学会が作成した急性期めまいの診療フローチャートが有用です。
発症様式、誘因・合併症、蝸牛症状、中枢症状で中枢性、末梢性の見当を付けます。その問診結果から、念頭に置くべき疾患を示しています。
初診時のバイタルサインチェック、基本的な神経学的診察、眼振と体平衡観察に応じて循環器疾患、脳卒中、その他のめまいをふるい分けます。
宇佐美真一、北原糺、室伏利久、内藤泰、牛尾宗貴、宇野敦彦、城倉健、杉内友理子、関根和教、中村正、伏木宏彰:急性期めまいの診療フローチャート.Equilibrium Res 78: 607-610、2019.
急性めまい診療では、頻度は多くないものの致死性疾患の除外が重要となります。
ショックや失神を「めまい」と訴える場合があるため、血圧、眼瞼結膜をチェックします。低血圧はショックの、高血圧は脳卒中のサインとなります。
脳卒中によるめまいを診断するため、眼球運動障害・構音障害の有無、顔面・上下肢の運動麻痺、感覚障害の有無、小脳症状の有無をチェックします。
致死性疾患を除外した後は、眼振所見から診断を進めます。
方向固定性眼振を認めた場合は、一側性内耳障害の可能性が高いと考えられます。音叉やストップウオッチによる簡易聴力検査が有用です。
方向交代性眼振(あるいは懸垂頭位での回旋性眼振)を認めた場合は、BPPV(良性発作性頭位めまい症)の可能性が高いと考えられます。
急性めまいを訴えるにもかかわらず、中枢所見・眼振のいずれも認めない場合は起立・歩行をチェックします。異常を認める場合は、あらためて脳卒中によるめまいを考える必要があります。
急性めまいでは、良性発作性頭位めまい症(BPPV:benign paroxysmal positional vertigo)、前庭神経炎、めまいを伴う突発性難聴、急性低音障害型感音難聴などが鑑別診断に上がります。
特定頭位で誘発されるめまい(頭位誘発性めまい)を主徴とし、これに随伴する眼振を特徴とする疾患である。メニエール病で生じるめまいは、特定の誘因なく発症する点でBPPVとは異なる。
めまいの持続時間についてもBPPVでは1分以内のことが多く、メニエール病より短い。また、メニエール病ではめまい発作に伴って聴覚症状(耳鳴、難聴、耳閉感など)の変動がみられるのに対して、BPPVではめまいに随伴する聴覚症状がみられない点が大きく異なる。
突発性に発症し、強い回転性めまいが持続する。その際、蝸牛症状(耳鳴、難聴など)を伴わないのが特徴であり、めまい発作に伴って聴覚症状の変動がみられるメニエール病とは異なる。また、前庭神経炎のめまい発作は通常1回のことが多く、めまいの反復を特徴とするメニエール病とは異なる。めまいの持続時間についても、前庭神経炎では24時間以上にわたることが多く、10分程度から数時間程度のめまい発作を特徴とするメニエール病より長い。
突発性難聴の約40%にめまいを伴う。メニエール病に伴う聴力閾値上昇は低音域に起こることが多いが、突発性難聴には限定なく、隣り合う3周波数で各30dB以上の難聴が72時間以内に生じた場合を診断基準としている。突発性難聴の場合は、めまい発作を繰り返すことはないが、メニエール病の初回発作との鑑別は難しいことがある。そのため、めまい発作と突発性の難聴で発症し、一側耳の低音障害型難聴を示す症例は「めまいを伴う突発性難聴」と診断し、第2回目の発作が起これば「メニエール病」と診断する。
急性あるいは突発性に蝸牛症状(耳閉感、耳鳴、難聴など)が発症する疾患のうち、障害が低音域に限定された感音難聴を呈する疾患である。メニエール病と違い、めまいを伴わず、低音域3周波数(0.125、0.25、0.5kHz)の聴力レベルの合計が70dB以上かつ高音域3周波数(2、4、8kHz)の聴力レベルの合計が60dB以下の場合が確実例とされる。 しかし、軽いめまいを訴える例、蝸牛症状を反復する例があることから、メニエール病に移行する例が存在することを念頭におくべきである。聴覚症状の発作が1回の場合、すなわち急性感音難聴は急性低音障害型感音難聴または突発性難聴と診断し、難聴を反復した場合にメニエール病非定型例(蝸牛型)と診断する。
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