急性めまいの診断プロセス
監修:平塚共済病院
神経内科 部長/脳卒中センター長 城倉 健 先生
「めまい」は日常診療の中でよく遭遇する疾患です。めまい疾患の大半は末梢性めまいですが、その一部に、脳卒中などの中枢性疾患に起因するめまい(中枢性めまい)があります。そのため、初診では中枢性めまいと末梢性めまいの鑑別が重要となります。
ここでは、急性発症しためまい患者さんの鑑別診断について解説します。
急性めまいに対しては中枢性めまいの可能性を念頭におき、下図のような流れで診断を進めます。

- 問診
- ・手や足、顔面の動きにくさやしびれ感
- ・ろれつが回らない(構音障害)
- ・ものが二重に見える(複視)
- 診察
- ・指標の追視
- ・構音障害のチェック(「パタカ」の繰り返し)
- ・Barré徴候の確認
- ・反復拮抗運動または指鼻試験の確認
上記より、
めまい以外に明らかな神経症候あり
脳卒中(脳幹、小脳上部の障害)・・・画像検査の実施、神経内科・脳神経外科・脳卒中科へ
強いめまいを訴えているにもかかわらず、めまい以外の神経症候がないか、診察範囲では不明
末梢性めまい(疑い)・・・Step2頭位眼振・頭位変換眼振検査の実施
- 【右後半規管型BPPV】
患側を下にした懸垂頭位への変換で、患側に
向かう回旋性眼振を認める。(懸垂頭位での回旋性眼振)
眼振消失後、坐位に戻すと逆向きの回旋性
眼振が出現する。
- 【右外側半規管型BPPV(半規管結石症)】
右向きで右向き眼振、左向きで左向き
眼振を認める。
(方向交代性下向性眼振)
患側下頭位でより強い眼振となる。
- 【右外側半規管型BPPV(クプラ結石症)】
右向きで左向き眼振、左向きで右向き
眼振を認める。
(方向交代性上向性眼振)
健側下頭位でより強い眼振となる。
- 【右前庭神経炎】
頭位によらず、患側から健側へ向かう水平性眼振を
認める。(方向固定性水平性眼振)
起立・歩行障害あり(体幹失調)
脳卒中(小脳下部の障害)・・・画像検査の実施、神経内科・脳神経外科・脳卒中科へ
起立・歩行障害なし
その他のめまい・・・要経過観察
以上のような流れで、効率的な診断を進めていきます。
脳卒中に伴うめまいは多くの場合、急性発症するため、激しい回転性のめまいを訴えることが少なくありません。一方で、良性発作性頭位めまい症であっても、持続的な浮動感を訴えて来院する患者さんもいます。めまいの性状を回転性か浮動性かに分け、回転性を末梢性めまい、浮動性を中枢性めまいとみなすと、誤りを犯す危険性が高くなりますので、まずは、めまいに伴う随伴症状をチェックすることが重要です。
「脳卒中が疑わしい場合」とは、脳卒中の危険因子(高血圧や糖尿病、肥満、喫煙、心疾患など)を複数持つ患者さんが急性めまいで来院した場合などをさします。