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実践!めまいの治療

問診のコツ

めまいの問診ポイント

めまいの性状

めまいの性状を
(1)回転性めまい:vertigo
(2)ふらつき:dizziness
(3)気が遠くなるような感じ:presyncope
に分けると、その原因についてある程度の見通しを持つことができます。

一般的に言うと、vertigoは末梢性疾患に多く、presyncopeは循環器疾患などの全身疾患に多くみられる傾向があります。ふらつきは末梢、中枢の様々な疾患で生じます。しかし、実際には、例えば小脳梗塞で回転性めまいをきたす例があり、良性発作性頭位めまい症で歩行時のふらつきを覚えることもあるので、めまいの性状だけで病変部位を即断せずに、症状の他の側面についても十分に問診することが重要です。

また、患者さんによっては、めまいの強い場合に回転感、弱い場合に浮動感や動揺感を訴えることもあるので、患者さんの言葉をそのままめまいの性状に当てはめてしまわずに、患者さんの話を通じて、そのめまいの性質を考えることが大切です。

発症の仕方

めまいが単発なのか反復するのかも、めまいの原因を鑑別する上で重要です。

例えば、前庭神経炎やめまいを伴う突発性難聴は単発ですが、メニエール病は反復するのが特徴です。これらの初発時にはそれぞれの鑑別が難しい場合もあり、正しい診断のために経過観察が必要な例もあります。一方、持続的なめまいでも、症状が一定で進行しないものと、変性疾患のように時間とともに進行するものがあります。ここでも注意深い経過観察が重要です。

めまいの持続時間

30秒程度でめまいが止まる良性発作性頭位めまい症のように、めまいの起こり方と持続時間を問診しただけでほぼ診断できる疾患があるほど、めまいの持続時間を知ることは重要です。めまいが続いた時間が一瞬なのか、数秒から数十秒なのか、数時間なのか、ずっと続いているのかで、想定される疾患は全く異なります。単に持続時間を尋ねるのではなく、患者さんに、めまいが起こった時、治った時の状況を具体的に思い出してもらうような聴き方が、正確な持続時間の把握につながります。

随伴症状

耳鳴、難聴、耳閉感などの蝸牛症状がめまいに随伴した場合は、内耳障害を想定しますが、前下小脳動脈の梗塞でも難聴を伴い得るので、他の神経学的所見のチェックが大切です。また、蝸牛症状がめまいの発作以前からある場合は現在のめまいと関係がないかもしれません。高齢者では、加齢による難聴とともに耳鳴を自覚していることが多いので注意が必要です。

蝸牛症状以外の神経症状として、例えばめまいが軽いのに立ち上がれない、短時間の意識消失がある、顔や身体のしびれを伴う、などの場合は中枢障害を考慮します。

誘因

明らかな回転性めまいが頭位の変換で生じる場合は、良性発作性頭位めまい症を考えます。朝、トイレのために立ち上がった時に急にめまいが起こったという訴えが典型的です。
また、立ち上がった時や長時間立ち仕事をしている時に、ふらついたり気が遠くなるようなめまいを感じる場合は起立性調節障害を疑います。

既往歴

高血圧、動脈硬化、心疾患、糖尿病などは脳血管障害や不整脈など生命にかかわる危険なめまいの背景にもなることが多いので注意が必要です。社会の高齢化に伴ってこのような基礎疾患を有する患者さんが増えており、問診ではこれらの疾患の既往や現在の治療状況を確認します。

その他、薬剤によってめまいが起こる場合がありますので、服用している薬剤の種類も把握しておく必要があります。特に降圧剤、抗不安薬、血糖降下薬、アミノグリコシド系抗生物質による治療歴の有無などはめまいに直接関係することが多く、重要です。

具体的な問診内容

基本的なめまいの問診

問診例 回答例
いつ?
どこで? 寝床のなかで
会社で
何をしていましたか? 台所で食事の準備中に
会議中に
どのように起こりましたか? 徐々に気分が悪くなってきた
急に周りが回った
続いた時間は何秒、何分、何時間? 30秒くらい
半日くらい
ずっと続いている
どうしましたか? じっと治るのを待った
床に横になって
そのようにしてどうでしたか? 安静でめまいが止まった
何をしても続いていた
今回が初めてのめまいですか? 初めて
数年前から
めまい以外に、頭痛やしびれ、耳鳴りなど他の症状はありますか? ありません
耳鳴りがあります
(意識がなくなって)気が付いたら倒れていました

問診で疾患のイメージが分かり、さらに詳しい問診を加えると、多くの場合大まかな診断は可能になります。しかし、例外もあることを常に念頭に置き、問診に加えて適切な検査を行うことで、より正確な診断を行うように心がけてください。