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メニエール病診断基準

監修:富山大学大学院耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座
教授 渡辺行雄 先生

前庭機能異常に関する調査研究班では研究活動の一環として、メニエール病診断基準を2008年度に改訂した。
前基準は1974年に当時のメニエール病調査研究班(本研究班の前身)により作成されたものであるが、今回、1)メニエール病の病態が内リンパ水腫である点を明記、2)メニエール病を確実例、非定型例蝸牛型、非定型例前庭型と明確に定義して分類、3)臨床症状と他覚的所見についての詳細な解説を追加、4)内リンパ水腫推定検査の重要性を明記、5)同様の症状を示す原因既知疾患の除外を強調、6)AAO-HNS(1995)基準との整合性を考慮、などの諸点を中心に基準を改訂した。
改訂に当たっては、前基準の疾患概念と記述を踏襲し、疫学調査などに必要な疾患定義の継続性が確保されるように配慮した。
本邦における本基準の一般化を期待したい。

1. メニエール病確実例

難聴、耳鳴、耳閉感などの聴覚症状を伴うめまい発作を反復する。

解説

メニエール病の病態は内リンパ水腫と考えられており、下記のような症状、所見の特徴を示す。

めまいの特徴
1) めまいは一般に特別の誘因なく発生し、嘔気・嘔吐を伴うことが多く、持続時間は10分程度から数時間程度である。なお、めまいの持続時間は症例によりさまざまであり、必ずしも一元的に規定はできないが、数秒~数十秒程度のきわめて短いめまいが主徴である場合、メニエール病は否定的である。
2) めまいの性状は回転性が多数であるが、浮動性の場合もある。
3) めまい発作時には水平回旋混合性眼振が観察されることが多い。
4) めまい・難聴以外の意識障害、複視、構音障害、嚥下障害、感覚障害、小脳症状、その他の中枢神経症状を伴うことはない。
5) めまい発作の回数は、週数回の高頻度から年数回程度まで多様である。また、家庭・職場環境の変化、ストレスなどが発作回数に影響することが多い。
聴覚症状の特徴
1) 聴覚症状は、主にめまい発作前または発作と同時に発現・増強し、めまいの軽減とともに軽快することが多い。
2) 聴覚症状は難聴、耳鳴、耳閉感が主徴で、これらが単独、あるいは合併してめまいに随伴、消長する。また、強い音に対する過敏性を訴える例が少なくない。
3) 難聴は感音難聴で、病期により閾値が変動する。また、補充現象陽性を示すことが多い。発症初期には低音域を中心とし可逆性であるが、経過年数の長期化とともに次第に中・高音域に及び、不可逆性となることが多い。
4) 難聴は初期には一側性であるが、経過中に両側性(メニエール病の両側化)となる症例がある。この場合、両側化は発症後1~2年程度から始まり、経過年数の長期化とともに症例数が増加する。
診断にあたっての注意事項
1) メニエール病の初回発作時には、めまいを伴う突発性難聴と鑑別できない場合が多く、上記の特徴を示す発作の反復を確認後にメニエール病確実例と診断する。
2) メニエール病と同様の症状を呈する外リンパ瘻、内耳梅毒、聴神経腫瘍、神経血管圧迫症候群などの内耳・後迷路性疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性疾患など原因既知の疾患を除外する必要がある。
これらの疾患を除外するためには、十分な問診、神経学的検査、平衡機能検査、聴力検査、CTやMRIの画像検査などを含む専門的な臨床検査を行い、症例によっては経過観察が必要である。
3) 難聴の評価はメニエール病の診断、経過観察に重要である。感音難聴の確認、聴力変動の評価のために頻回の聴力検査が必要である。
4) グリセロール検査、蝸電図検査、フロセミド検査などの内リンパ水腫推定検査を行うことが推奨される。

2. メニエール病非定型例

下記の症候を示す症例は、内リンパ水腫の存在が強く疑われるのでメニエール病非定型例と診断する。

1) メニエール病非定型例(蝸牛型)
難聴、耳鳴、耳閉感などの聴覚症状の増悪・軽快を反復するが、めまい発作を伴わない。
解説
  • 1) 聴覚症状の特徴は、メニエール病確実例と同様である。
  • 2) グリセロール検査、蝸電図検査などの内リンパ水腫推定検査を行うことが推奨される。
  • 3) 除外診断に関する事項は、メニエール病確実例と同様である。
  • 4) メニエール病非定型例(蝸牛型)は、病態の進行とともに確実例に移行する例が少なくないので、経過観察を慎重に行う必要がある。
2) メニエール病非定型例(前庭型)
メニエール病確実例に類似しためまい発作を反復する。一側または両側の難聴などの聴覚症状を合併している場合があるが、この聴覚症状は固定性で、めまい発作に関連して変動することはない。
解説
  • 1) この病型は内リンパ水腫以外の病態による反復性めまい症との鑑別が困難な場合が多い。めまい発作の反復の状況、めまいに関連して変動しない難聴などの聴覚症状を合併する症例ではその状態などを慎重に評価し、内リンパ水腫による反復性めまいの可能性が高いと判断された場合にメニエール病非定型例(前庭型)と診断すべきである。
  • 2) 前項において難聴が高度化している場合に、めまいに随伴した聴覚症状の変化を患者が自覚しない場合がある。十分な問診と、必要であれば前庭系内リンパ水腫推定検査であるフロセミド検査を行うなどして診断を確実にする必要がある。
  • 3) 除外診断に関する事項は、メニエール病確実例と同様である。
  • 4) メニエール病非定型例(前庭型)の確実例に移行する症例は、蝸牛型と異なって少ないとされている。この点からも、この型の診断は慎重に行うべきである。

3. メニエール病診断基準(簡易版)

この簡易版は、著述などの際に簡略に記載できるように、メニエール病診断基準の解説部分を省略したものである。
簡易版を利用する場合は、必ず診断基準の全文を参照し、内容を十分理解する必要がある。

Ⅰ.メニエール病確実例

難聴、耳鳴、耳閉感などの聴覚症状を伴うめまい発作を反復する。

Ⅱ.メニエール病非定型例

下記の症候を示す症例をメニエール病非定型例と診断する。

① メニエール病非定型例(蝸牛型)
聴覚症状の増悪・軽快を反復するが、めまい発作を伴わない。
② メニエール病非定型例(前庭型)
メニエール病確実例に類似しためまい発作を反復する。一側または両側の難聴などの聴覚症状を合併している場合があるが、この聴覚症状は固定性で、めまい発作に関連して変動することはない。
この病型の診断には、めまい発作の反復の状況を慎重に評価し、内リンパ水腫による反復性めまいの可能性が高いと判断された場合にメニエール病非定型例(前庭型)と診断すべきである。
○原因既知の疾患の除外

メニエール病確実例、非定型例の診断にあたっては、メニエール病と同様の症状を呈する外リンパ瘻、内耳梅毒、聴神経腫瘍、神経血管圧迫症候群などの内耳・後迷路性疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性疾患など原因既知の疾患を除外する必要がある。

メニエール病診療ガイドライン 2011年度版
厚生労働省難治性疾患克服研究事業 前庭機能異常に関する調査研究班
(2008~2010年度)/編より

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