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実践 めまいの治療 -急性期の応急処置と主な疾患の治療方法について-

監修:埼玉医科大学神経耳科
教授 伊藤 彰紀 先生

めまいの原因には、様々な要素が絡み合っていることから患者ひとりひとりに合わせて治療を選択する必要があります。
ここでは、めまい急性期の応急処置と代表的なめまい疾患の治療について解説します。
なお、ここに示した治療例はあくまでも一般的な薬剤を使用した一例として参考にしていただきたいと思います。

めまい急性期の応急処置

めまいの発作期には、激しいめまいとともに悪心、嘔吐などがあるため、症状に応じた対症療法を行います。内服が不可能であることが多いため、静注や筋注が主となります。

めまい

7%炭酸水素ナトリウム注射液の静注あるいは点滴を行います。本剤は内耳血流を増加させ、内耳虚血時の酸素分圧の低下を抑制することにより、めまいを抑制していると考えられています。さらに、虚血部位のアシドーシスを補正し、機能改善にも役立つとも言われています。
投与時における注意点は、急速静注による血管痛を避けることと、炭酸水素ナトリウム濃度の低下により抗めまい作用が減弱することがあるため、他剤との配合に注意することです。

悪心・嘔吐

急性期では内服が困難であるため、鎮吐作用を示すメトクロプラミド静注などで処置します。メトクロプラミドの過量投与による錐体外路症状の発現には注意を要します。

めまい発作への不安

不安が強い急性期のめまい患者には、ジアゼパムなどの抗不安薬を筋注します。抗不安薬は、前庭代償の初期過程を促進することによる抗めまい作用も持つと考えられています。
抗不安薬による呼吸器系および循環器系の抑制に注意が必要です。

めまい急性期の主な治療薬
※効能・効果、用法・用量、使用上の注意等につきましては、各薬剤の添付文書をご参照ください
・7%炭酸水素ナトリウム 40~250mL 点滴(症状に応じて用量を加減)
・メトクロプラミド 10mg 静注
・ジアゼパム 5mg 筋注

主なめまい疾患の治療方法について

以下に代表的なめまい疾患ごとの治療方法を紹介します。

メニエール病
イソソルビド製剤、循環改善薬、抗不安薬、ビタミンB12製剤、漢方薬などを投与

膜迷路の水腫軽減を目的に、浸透圧利尿薬であるイソソルビド製剤を投与します。方法は90~120mL/日、分3で開始し、めまい発作の状況により適宜増減します。減量は30mLずつとし、最終的に30mL/日にて発作が起きないことを確認した時点で終了します。即効性は期待できないため、数週間にわたる投与が必要です。ただし、長期投与による抗利尿ホルモンの作用亢進を防ぐためには、漫然投与は控え、めまい発作の反復、聴力変動など、疾患の活動性のある時期に限り投与することがポイントとなります。
これらの薬剤でめまい発作の制御が困難な場合や、低音域の聴力低下が著しい場合にはステロイド薬の投与を行う場合もあります。メニエール病においてステロイド薬を使用する場合には、ミネラルコルチコイド作用のないものを選択することが望ましいと考えます。ステロイド薬は通常2~3週間で漸減しますが、めまい発作が完全に抑制できない場合には、1~2ヵ月間、微量投与を行います。また、めまい発作時の応急処置として、浸透圧利尿薬とステロイド薬の点滴を行う場合もあります。

主な治療薬
※効能・効果、用法・用量、使用上の注意等につきましては、各薬剤の添付文書をご参照ください
・イソソルビド内用液剤 90~120mL/日 分3
・アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物 300mg/日 分3
・メコバラミン 1500μg/日 分3
・柴苓湯 1日量 分3
(めまい頻発、高度難聴の場合、下記ステロイド薬を追加)
・デキサメタゾン 2mg/日から漸減
 注)糖尿病患者に副腎皮質ステロイドを使用すると高血糖をきたす場合がある
・レバミピド 300mg/日 分3 (随伴する胃炎に対して)
前庭神経炎
対症療法として抗めまい薬、鎮吐薬、抗不安薬などを投与

抗めまい薬、鎮吐薬、抗不安薬などを症状にあわせて投与します。また、ステロイド薬の投与(7~8日間ほどで漸減終了)を行う場合もあります。めまい症状(強い眼振が認められる場合)や悪心・嘔吐が高度な場合には基本的に入院を勧めます。
激しいめまいや悪心が減弱し、起立可能となったのちには、前庭代償を促進させるために、積極的に平衡訓練を実施します。平衡訓練の方法は、次の良性発作性頭位めまい症の項に記述した非特異的平衡機能訓練法をご参照ください。

主な治療薬
※効能・効果、用法・用量、使用上の注意等につきましては、各薬剤の添付文書をご参照ください
・ベタヒスチンメシル酸塩 36mg/日 分3 (めまいに対して)
・ジフェンヒドラミンサリチル酸塩40mg+ジプロフィリン26mg/回 1日3回 (悪心・嘔吐、めまいに対して)
・トフィソパム 150mg/日 分3 (随伴する自律神経症状に対して)
・メコバラミン 1500μg/日 分3
・プレドニゾロン 30mg/日から漸減
 注)糖尿病患者に副腎皮質ステロイドを使用すると高血糖をきたす場合がある
・レバミピド 300mg/日 分3 (随伴する胃炎に対して)
(めまい症状、嘔気・嘔吐が高度な場合、点滴治療)
・7%炭酸水素ナトリウム 250mL/日 (めまい・嘔気が治まるまで)
・ヒドロコルチゾン 300mg/日 (2~3日ごとに100mgずつ漸減)
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
頭位治療を基本とし、補助的に循環改善薬、抗めまい薬、抗不安薬などを投与

主な原因は、半規管結石症canalolithiasis(半規管内の内リンパに浮遊耳石が迷入する原因)と、クプラ結石症cupulolithiasis(半規管膨大部の感覚細胞の上部にあるゼラチン状の構造物であるクプラに浮遊耳石が付着する原因)に大別されます。基本は、次に提示するように、耳石を半規管内から卵形嚢へ移動させることを想定した頭位治療(理学療法)を行います。
頭位治療は原因となる半規管によって各方法が選択されます。BPPVの約70%を占める後半規管型はEpley法(半規管結石症に対して)(図1)、Semont法(半規管結石症およびクプラ結石症に対して)(図2)、あるいはBrandt-Daroff法(クプラ結石症に対して)(図3)を行います。残りの約30%を占める水平半規管型は、Lempert法(半規管結石症に対して)(図4)、あるいはBrandt-Daroff法(クプラ結石症に対して)(図3)を行います。ただし、原因となっている半規管が特定できない場合には、非特異的理学療法(頭部運動によるめまいのリハビリ)を行います(図5)。

BPPVの理学療法
原因半規管 病態 理学療法
後半規管 半規管結石症 Epley法、Semont法
後半規管 クプラ結石症 Semont法、Brandt-Daroff法→Epley法
水平半規管 半規管結石症 Lempert法
水平半規管 クプラ結石症 Brandt-Daroff法→Lempert法
明確でない 明確でない 非特異的理学療法
右後半規管型BPPV(半規管結石症)に対するEpley法
①坐位正面 ②懸垂頭位 ③患側の右へ45°まで回旋
⑥横向きのまま坐位にもどす、顎を引き20°下方を向く ⑤さらに健側の左135°まで回旋、躯幹も左に向ける ④健側の左45°まで回旋
(注:眼振が消失するまで各頭位で静止する)
右後半規管型BPPV(半規管結石症あるいはクプラ結石症)に対するSemont法
①坐位とし、頭部を左に45°捻転  ②右後半規管の面で勢いよく上体を右側に倒す、顔を上方に向け、さらに下顎を突き上げる、約3分間静止  ③そのままの頭位で勢いよく(可及的速やかに)上体を左に倒す、逆に下顎を引き左前額部をベットに押し付けるようにする、約3分間静止
④そのままの頭位で坐位にもどす
右後半規管型BPPV(クプラ結石症)に対するBrandt-Daroff法
①坐位正面、閉眼  ②勢いよく上体を右側に倒し、右後頭 部をベットに付ける  ③再び坐位に戻し30秒静止
(注:これらの運動を1日5~10回繰り返し行う) ④勢いよく上体を左側に倒し、左後頭部をベットに付ける、めまいが落ち着くまでその姿勢を保つ、その後坐位にもどす
右水平半規管型BPPV(半規管結石症)に対するLempert法(変法)
①臥位正面   ②健側の左へ頭および躯幹を90°回旋  ③同様に180°回旋
  ⑤同様に360°回旋  ④同様に270°回旋
(注:眼振が消失するまで各頭位で静止する)
BPPV全般に対する非特異的理学療法(頭部運動によるめまいのリハビリ)
①頭を左右に45°傾ける(10回ずつ)  ②頭を前後に45°傾ける(10回ずつ)   ③頭を水平に左右へ45°振る(10回ずつ) 
⑥坐位→右側臥位→坐位→左側臥位(10回ずつ)  ⑤坐位→臥位→坐位(10回)   ④頭を左右に大きく回旋する(首回し)(10回ずつ) 
(注:①~⑥を1日4~5回繰り返し行う)
非特異的理学療法(頭部運動によるめまいのリハビリ)のポイント
  • 1.医師に相談して許可を得る。頸椎症などに注意。
  • 2.ふらつきや転倒に備えて安全な場所で行う。
  • 3.めまいが起こりやすい動作を中心に行う。
  • 4.楽な動作は省略してもよい。
  • 5.1回5~10分程度、1日4~5回を目安に。
  • 6.あまりにも気分が悪いときは中止する。
  • 7.短時間でも毎日続けることが大切。

頭位治療後に、めまいは治まっても軽度の浮動感やふらつきを訴える症例も少なくないので、そのような場合には、循環改善薬、抗めまい薬、抗不安薬などを症状が落ち着くまで投与した方が良いでしょう。
頸椎異常などのために頭位治療を行うことができない症例では、やはり上記の薬物療法でめまいの改善を待ちます。

主な治療薬
※効能・効果、用法・用量、使用上の注意等につきましては、各薬剤の添付文書をご参照ください
・アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物 300mg/日 分3
・ベタヒスチンメシル酸塩 36mg/日 分3
・トフィソパム 150mg/日 分3 (随伴する自律神経症状に対して)
めまいを伴う突発性難聴
めまいに抗めまい薬、循環改善薬、制吐薬、抗不安薬など、
難聴に循環改善薬、プロスタグランジン薬、ステロイド薬などを投与

めまいに対しては、抗めまい薬、循環改善薬、制吐薬、抗不安薬などを投与します。難聴に対しては、循環改善薬、プロスタグランジン薬、ビタミンB12製剤、ステロイド薬などを投与します。ただし、難聴が高度な場合には点滴によるステロイド薬の大量投与を行います。点滴治療を行う場合には基本的に入院を勧めます。治療の開始時期が予後を左右する一因と考えられているため、できるだけ早期の治療開始が望まれます。
高血圧症、糖尿病、ウイルス性肝炎などの既往がある場合には、ステロイド薬の大量投与は各疾患の厳重な管理下に、厳密かつ慎重に行わなければなりません。

主な治療薬
※効能・効果、用法・用量、使用上の注意等につきましては、各薬剤の添付文書をご参照ください
・アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物 300mg/日 分3 (めまいに対して)
・ベタヒスチンメシル酸塩 36mg/日 分3 (めまいに対して)
・ジフェンヒドラミンサリチル酸塩40mg+ジプロフィリン26mg/回 1日3回 (悪心・嘔吐、めまいに対して)
・トフィソパム 150mg/日 分3 (随伴する自律神経症状に対して)
・リマプロスト アルファデクス(プロスタグランジンE1誘導体) 30μg/日 分3 (虚血性症状に対して)
・メコバラミン 1500μg/日 分3
・プレドニゾロン 30mg/日から漸減(外来治療)
 注)糖尿病患者に副腎皮質ステロイドを使用すると高血糖をきたす場合がある
・レバミピド 300mg/日 分3 (随伴する胃炎に対して)
(難聴、めまいが高度な場合、点滴治療)
・アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物 80mg/日
・ヒドロコルチゾン 500mg/日 (2~3日ごとに100mgずつ漸減)(入院治療)
・7%炭酸水素ナトリウム 250mL/日

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