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メニエール病の疫学調査

監修:富山大学大学院耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座
教授 渡辺行雄 先生

厚生労働省難治性疾患克服研究事業前庭機能異常に関する調査研究研究班では、昭和49年(1974)の発足当時から現在に至るまで種々の方法でメニエール病の疫学調査が継続されている。この調査は、研究班員所属施設による全体調査と、班員独自の個別調査に分けられる。
このうち全体調査は35年の長期にわたるもので、症例数も多数で種々の対照調査も行われるなど、世界的にも例を見ない充実したものである。また、個別調査は各研究施設による地域別有病率、メニエール病患者と対照例の行動特性調査など種々のものが行われているが、とくに、ここ10数年、富山大学による特定地区の定点観測的な有病率、罹患率調査が継続されている。
本稿では、平成20年(2008年)の調査結果から、最近の発症年齢、性別分布、有病率の傾向について簡略に述べる。
なお、これらの調査では遅発性内リンパ水腫に関する調査が含まれているが本項では省略する。

1.研究班員所属施設による調査

平成20年1月1日から12月31日までに新規発症して研究班員所属の医療機関を受診したメニエール病確実例248症例について、発症年齢、性別を調査した。
平均発症年齢は男性48.5歳、女性51.4歳、直近の国勢調査結果で補正した階層別年齢で60歳以上の発症割合は男性19.8%、女性30.2%であった。
ちなみに1975年当時の調査では、平均発症年齢は男性42.2歳、女性41.4歳、60歳以上の発症割合は男性10.7%、女性13.2%であり、平均年齢は約10歳、60歳以上の発症割合は約2倍に増加しており、近年のメニエール病発症年齢の高齢化を示す結果であった。
また、性別では男性33.5%、女性66.5%と女性優位の結果を示した。

2.特定地区調査による有病率、罹患率の推定

メニエール病の有病率、罹患率の推定は患者動態を把握することで厚生行政への反映、医療経済を考慮する上で重要な事項である。
しかし、メニエール病の場合は、1)本疾患を診療する全ての診療科での診断基準の理解が必ずしも十分ではない、2)複数の医療機関を受診している患者が少なくない、などの理由で医療機関を対象とした精度の高い調査が難しい状況である。
これらの点を考慮して、本研究班に所属している富山大学耳鼻咽喉科(旧富山医科薬科大学)では平成6年より次のようにメニエール病の有病率、罹患率を推定する調査を継続している。
この方法は耳鼻咽喉科の受診圏が限定されている特定地区において、1)メニエール病では聴覚症状を随伴することから耳鼻咽喉科を受診する可能性が高く、2)隣接の耳鼻咽喉科診療を行う病院までが遠距離であるとの特性から、メニエール病患者はこの地区の病院を受診する可能性が高いとの前提で行った調査である。

対象は新潟県糸魚川市を主体に、同佐渡市、岐阜県高山市の3地区で、平成20年は糸魚川市、佐渡市において調査を行った。
実際の調査ではこれらの地区にある基幹病院の耳鼻咽喉科においてメニエール病と診断された患者のカルテを全てチェックし、メニエール病確実例と評価された例を対象症例とした。
平成20年の糸魚川市調査では有病率48.3/人口10万人、罹患率6.0/人口10万人、佐渡市では有病率34.4/人口10万人、罹患率3.5/人口10万人であった。
本邦の患者数はこれを基礎に約40,000~60,000人と推定される。なお、上記の調査方法から実際の有病率はこれらより若干高い可能性が考えられる。

糸魚川市では平成6年以来15年にわたり同調査が継続され、調査開始時の有病率は21/人口10万人であったが、調査継続と共に増加し平成15年以降は40/人口10万人程度の安定した数値が示されている。
佐渡市はこの年次が初回調査であり、調査継続により有病率推定がより高値となる可能性がある。
また、以前の高山市の調査でも35/人口10万人程度の有病率が示されていた。
限定された地区での調査ではあるが、各地点において類似した数値が安定的に示されており、本邦における一般的な有病率推定の基礎的なデータとなり得ることを示した。
性別は糸魚川市では一貫して女性優位であった。また、同地区の発症年齢をみると、平成20年調査における患者全体に占める65歳以上新規発症患者割合が31.8%で、この数値は平成6年調査の2倍であり、研究班員所属施設調査よりも顕著な高齢化傾向を示していた。

研究班員、研究協力者および所属施設

研究班員
渡辺 行雄 (富山大学 教授)/池園 哲郎 (日本医科大学 准教授/現 埼玉医科大学 教授)/
伊藤 壽一 (京都大学 教授)/柿木 章伸 (高知大学 講師/現 東京大学 講師)/
肥塚 泉  (聖マリアンナ医科大学 教授)/鈴木 衞  (東京医科大学 教授)/
高橋 克昌 (群馬大学 講師)/工田 昌也 (広島大学 講師)/武田 憲昭 (徳島大学 教授)/
土井 勝美 (大阪大学 准教授/現 近畿大学 教授)/山下 裕司 (山口大学 教授)
研究協力者
青木 光広 (岐阜大学 講師)/宇佐美 真一 (信州大学 教授)/
高橋 正紘 (横浜中央クリニック めまいメニエール病センター長)/長沼 英明 (北里大学 講師)
(五十音順)

厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 前庭機能異常に関する調査研究
平成20年度 総括・分担研究報告書より

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